滞在はや2週間.
実は今回の住み移りの契機は,22年前に僕のフランス滞在の最初の体験となったソルボンヌ大の文明講座に,こともあろうに妻が入りたいと言いだしたことに始まる.僕は主役を引き立てる添え物,いわば“ヒモ”として附いて来た.
実は妻が勉強している間にヨーロッパを旅しまくろうなどと考えていたのだが,結局すっかりパリに根っこが生えてしまったようだ.『スローライフ』という言葉は嫌いなのだが,一日二回きちんと料理をし,昼寝をし,散歩をしたり映画を観たり,ああでもないこうでもないと愚にもつかぬ事をいちいち夫婦でだらだら喋っている暮らしというのは悪くない.
フランス語は超デビュタント(=初心者)で語学留学も初体験という彼女に,フランス語だけを使ってしっかりと教え込んでいく教程にも驚かされるが,そこにフランス人民の血税が惜しげなく注ぎ込まれて1ヶ月で550€(約¥7万5千)という学費のリーズナブルさも特筆に値する.これより安い語学留学は僕の知る限りモスクワくらいしか見あたらない.
今回は手を抜かずに不動産屋を通してきっちり部屋を選んだ.近所にはもうパリでも珍しくなったマルシェ(朝市)が立ち,bio(有機)の野菜や新鮮な惣菜が手に入るのも嬉しい.なにより,キッチンがとても気に入ってしまった.イギリスの台所のように大きな窓から大聖堂のように緑が飛び込んでくるのだ.一見ぼうぼうに生い茂っているが如き草もよく見るとツタが束ねたケーブルのように(?)大きな流れを描き,人の手が入っていることが分かる.
妻が「ほんとにケーブルなんじゃないの」とぼそっと呟いた.隠れてヲタ属性の強くテクノロジー好きなこの国のこと,それもあるやも知れない.
家族の事情で今月末からひと月あまり,フランス・パリに住み移ることになった.
僕は特にパリで仕事がある訳ではないので,青春を過ごした街を思索にふけりつつ散策ひと月だらだらと旨いもんだけ喰って生活できれば最高なのだが,それでは金銭的にも人間的にも破滅する.それに生来の仕事中毒ゆえ,いきなり曲を書きたくならないとも限らない.格好よく言えば『ワーキング・ヴァカンス』よ,なんて洒落込んでみたものの...
5年前,中国映画で北京に引きこもった際PowerBook G4とVSL Opus 1を中心に揃えたモバイル作曲道具も若干outdated.
思いきって新調することにした.ちょうど税法上の減価償却も終わったところだし(笑)
- Apple MacBook Pro 15" (early 2009) CTO 2.53GHz/4GB RAM/250GB HDD@7,200rpm →w/Logic Pro 8+Sonnox Oxford+Altiverb etc.
- Apogee Duet w/carrying case →やはり使い慣れたApogee Ensembleの弟分がよい,と.
- M-Audio KeyRig 49 →あまり選択肢は無かったが,重量・荷造りサイズなどとの妥協点.
- Sony SRS-M50 powered monitor (white) →手のひらに乗る業務用モニター.白といってもちょっとラメ入っててカワイイです.
- Sennheiser HD650 w/Zu Mobius mk2 cable(既存)
- Vintage Computer オリジナル 2ポート eSATA ExpressCard
- 秋葉館 AKB35SC-10005 外付けHDD 1TB(eSATA接続)→Vienna Instrumentなど約800GBの音源を詰め込む.
オレンジ色のfirewire (800/400) ケーブルがお洒落だしょ.もうちょっと汚れてきたりするととってもフランス的な色合い.VCのSATAカードをわざわざL.A.から取り寄せたのは,Mac OS X起動をサポートしている現状ほぼ唯一の選択肢だから.外付けHDDに16GBだけパーティションを切り,非常用のOSを入れてディスク治療/復元ユーティリティが走るようになっている.旅行中にひとつしかないボリュームがクラッシュしたら悲劇だもんね.
ボリューム名(普通は"Macintosh HD"とかなってる)はMBP本体が"Le Voyageur"(=旅する者),外付けが"Workspace II",非常用起動ボリュームは"Le Sauveteur”(=救済者)とリネーム.
ま,男の子はおしなべてメカ(→死語か・・・)自慢したがるものなので,適宜お読み流しを(笑)
それにしても修くんだいじょうぶですかこんなに衝動買いして・・・と不安になっていたら,韓国の新たなオンラインゲームのテーマを含めてまとまった依頼が来たのでちょっと安心.しかし楽想がかなり東洋的なイメージなので,パリで作曲したらどんなになってしまうのか・・・.パリに多数ある中華のセルフレストランの春巻きのような曲になってはしまわないか.まぁいいや.あれ美味いから(本当).
あ,ツールといえばこんなものも購入→
やはりこの男,仕事をする気は半分くらいしかないらしい.
気が付くと,身のまわりから愛すべきものが次々と消えて行ってしまった...
ひとつは,子供の頃からよく線路にその通過を観に行っていた,東京発のブルートレイン.
そしてSpa王ペペロンチーノに至るまで.
消えていくものにはすべて理由があり,残されるものにもそれなりの道理がある.(詳しく説明をくださった上私の拙いメールに応じてネットショップで追加再販にまで踏み切ってくれた日清食品のiさんに,この場を借りて感謝の弁を述べさせていただきます...)
わかっちゃいる.しかし廃止間近に乗りに行ったり箱で買い占めても,どうにも納得できない.
そんなとき,我々から出てくる言葉は単に「好きだったのに」「惜しい」という情緒論ばかり.そして結局は「仕方ない」「さよなら.そしてありがとう」などと前を向くのが大人であるかのようなこの社会の空気・・・.
もっと子供っぽく声を荒げてもいいのではないか.
中国やヨーロッパで液晶TV付きのぴかぴかの最新式寝台車が満席になっている賑わいを目にするたび,ちょっと悔しくなる.
最近僕がこんなにノスタルジックになってしまったのは何故でしょうね...?
a) 歳をとったと感じ,消えゆくものに自分を重ね合わせ,愛おしくなる.つまり自己愛の延長.
b) 歳をとったと感じ,消えゆくものに自分を重ね合わせ,自分も消されちまうんじゃないかと恐怖を感じる.
c) 多数決に支えられたマーケティングへの抗議.
d) 急激な『鉄』化.
それとも・・・
昨年秋に行ったプラハで買った食材が,いまだ迫り来る賞味期限に脅かされつつも我が家の食卓を彩っているという報告です.
海外旅行にお醤油を持って行く人,まだ結構いらっしゃいますよね.決して恥ずかしい事ではないです.醤油は日本・韓国・北朝鮮・中国など東北アジアの生んだ素晴らしい食文化ですから.
でもね,そんな日本文化の優位を語れるのもせいぜいハワイくらいまで.ポーランドやチェコに行ってごらんなさい.実は輸入モノが入る前,彼の国々では中世からすでに大豆と塩を元に立派な『醤油』とも言うべき発酵調味料を作っていたんです.アメリカだって,東欧移民の多いシカゴやNYでは,かのキッコーマンすら彼らの調味料の『代用』として仕方なく使われていたりするのです.
この写真の右端"Tekuté Koření(テクテー・コジェニー)がチェコの醤油.ちょっと塩分が強いけど,独特の匂いが日本の醤油以上に『和』を醸し出しています.舞茸とタマネギを叩いたのにこいつをまぜると最高のステーキソースができますね.そのほか,ペペロンチーノにたらっと一滴たらすよい感じ.まさに文化が匂います.日本の醤油も確かに美味しいですが,こいつは別物.「慣れ」を剥がすと,肉にも野菜にも『ソース』としてのポテンシャルは一枚上手のような気がします.
ポーランドではこいつをKotlet schabowy(コトゥレットゥ・スハーボヴィ)といういわばトンカツにパプリカと一緒にバシャバシャかけるのですが,今は亡き我が父曰く,それはまったく日本食と違わぬ味です.
その左横,"Universal Spice"といかにも怪しい英語で書かれているのはTESCO(イギリス系スーパーマーケットチェーン)のプラハ店で買ったもの.なんだよ,ユニヴァーサルって・・・それもイギリスの.しかし侮ることなかれ.イギリスは確かにレストランはマズイけどスーパーマーケットで売っている食材の質はかなりのものなのです.この『スパイス』もその名とは似ても似つかぬ一種の『ブイヨン』です.野菜炒めなんぞにも最適.野菜ブイヨンにちょっと上記の醤油をたらしたような味.たしかに"universal"で,ある種有機味の素的な万能粉.じゃがいもとの相性が特に良いようです.
そもそも,元東欧(現在は「中欧」と言われる元共産圏の国々)の食い物はおしなべて美味い.共産圏時代にも何度も足しげく通った僕はいつか日本に「共産圏レストラン」ができないものかと心待ちにしていました.それくらいうまいし安い.日本人観光客の多くが旧西欧圏ばかり廻って,ポーランドやチェコ,ハンガリーに入った瞬間食べ物が突然頬から落ちるようになることを知らないのは実に不幸です.
左端の"Michel & Augustin"(ミシェル&オーギュスタン)のバターサブレはフランスのものですがたいそうなお気に入り.手作りっぽい味.ronds et bons(丸くておいしい)はロン&ボンと韻まで踏んでいまして...
近々またヨーロッパに長く行くことになりそう.また買うことは確かですが,持って来て余らせて地に跪くか,現地で使い切ってしまい天を仰ぐか・・・.少なくとも賞味期限を過ぎてしまって貴重な荷物をゴミ箱に捨てることのないよう(→激しく経験者)考えて買いませう.
ヴァレンタイン特集(笑)
チョコレートに合うワインというのを探求するのも楽しい.我が家ではパリからハンドキャリーで持ってきたちょっといい白ワインを開けてしまおうか,とも思うのだが...
いいワインを開ける時,怖いのは手をすべらせてボトルを落としてしまうことだけではない.開けたらブショネ(仏:bouchonné/英:corked)だったということもあり得るのだ.保存状態や抜栓方法にも罪はなく,かのトゥールダルジャンでも1日1本はこれで高級ワインを捨てているという恐ろしきロシアンルーレット.
しかしそれを直してしまう方法があるという.こんなページを見つけた.
それにしてもブリタにぶち込むのが即効性があるというのは本当か.アメリカ人の味覚をそこまで信じてよいものか.
よい子は真似をしてみるとよいでしょう.
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