ピアノ曲を発表した直後によりによって,ピアニストとしては看過できぬニュースが飛び込んできた.
そう言えばここ数年,オーストリアの職人集団ベーゼンの経営も,グローバル化で米帝の投資会社に転がされて首をかしげる歩み方をしていたもんな.
素直に言えば,あまり嬉しいニュースではない.
Steinway好きの僕だが,Granado Espadaの"Aria de Coimbra"を始め,中国映画のサントラ,また馬島昇とのコンサートなど,あらゆる仕事で実はベーゼンのImperial (97鍵) をも愛用してきた.とても素直なピアノで,心に積もっているちょっとした塵のようなものが音に出てしまう,繊細だが同時に雄弁な楽器だ.一度乗りこなせば言うことを聞くサラブレッドのようだ.
Yamahaとしてはブランドを統合まではしないつもりだそうで,楽器のハードウェア的運命としてはそれで少し胸をなで下ろせそうだが,心配なのは販売法や哲学の大きな違い.香港が中国に返還されるようなもんですよ.一国二制度ならぬ一企業二ピアノ.かつてKurzweilとYoung Changで破綻してるからなぁ...Yamahaという企業は個人の音楽家対象というよりもペダゴジックな組織の中で楽器を売ってきた伝統があるから,僕のような一介の個人作曲家がちょっとお金貯めてベーゼン買おう,というのが難しくなってしまわないか・・・あるいはあの職人的メンテはどこに?Yamaha嘱託の調律師さんとベーゼンのマイスターでは調律の始め方から弦間のデチューンまで全然違うのです.(僕は北京のベーゼンの調律師の仕事に惚れて,そのために中央電視台のImperialを愛用したと言っても過言ではありません)
それだけが気に掛かって不眠に輪が掛かっています.
誤解のないように言っておきますが,Yamahaもいいピアノ造ってますよ.C7なんか一度調整をちゃんとすると半永久的に素晴らしい.日本の借家で育った僕にはYamahaの音にむしろ郷愁があったりもする.
それにしてもYamahaはどこに向かうのでしょう.Steinwayがサンプリングピアノ開発に手を出したのに対抗して,以前ドイツの電子音楽ソフトメーカーSteinbergの技術を買収したYamahaがベーゼンのハイスペックサンプリングを出すのではという説もささやかれていて,もっともらしい話ゆえに怖いですね.
演奏家から見ればただ好き嫌いの問題というだけ.関係者の方が読んでいらっしゃってもどうかお目こぼしのほどを.
ベーゼンドルファーといえば、
ベーゼンを愛用していた鍵盤の皇帝こと、オスカー・ピーターソン氏が12/23日にお亡くなりになってしまいましたね‥
また一人、偉大なjazz界の巨匠が天国に召されていきました。
きっと天国では、とんでもない豪華な方々と共演しているんでしょう
超絶技巧合戦やら初見で正確に弾く合戦?やらを、やっているんでしょうか‥聞きたいなぁ‥
Posted by: mig | Wednesday, 26 December 2007 at 07:25
>mig
忙しさにかまけてうっかり知らずにいました>オスカー・ピーターソン氏の逝去
そうですかー.今年の天国はひときわ豪華な顔ぶれで楽しそうですねまた...向こうにプロバイダーがあればライブチャットで様子を送ってもらえるのになぁ(笑)
Posted by: Osamuxxxx | Wednesday, 26 December 2007 at 15:12