ソウル4日め,今夜はとてつもないものを食っちまった.
いい意味で.
韓国には何度も足を運んで,すでに人生の何割を過ごしているのかと考えるようになったが,恥ずかしながらこりゃ知らなかっただよ.釜山なんかじゃ結構ポピュラーなのかもですが.
単刀直入に言って,机が箱になっていて,その箱にどどどどどどっと牡蠣を入れてこれでもか,これでもかと蒸すわけです.牡蠣の刺身やトンチミなんかをすすって待つわけなんですがやがて箱から湯気が吹きだしてきて,あれよあれよという間に蒸気機関車みたいになってきて,あちぃの熱くねぇのって...で,このへんで一人一枚片手分の軍手と赤いバケツが支給され,蒸し上がった牡蠣を豪快に分解して食うわけです.いちおう酢やらチョジャンなどもあるのだけど,自然のままの塩気でじゅうぶんイケます.
その味ときたら,牡蠣の概念を根本から覆してしまうほどの説得力.
牡蠣をひん剥きながら『彼女はちっこいけどグラマラスだ』『こいつはセクシーだ』『・・・』などと会話に花も咲こうというものです.
で,店のアジュンマ(おばちゃん)の顔もなんとなく牡蠣っぽい.牡蠣が「ネェ〜〜」とか唸りながら歩いてくるイメージです.牡蠣を長年扱っているうちにそうなってしまったのか,それとも自己愛の延長として牡蠣を扱う決心をしたのか,神のみぞ知る.誰にも呼ばれないとそれとなく壁に張りついていたりします.
20匹(匹でよいのか)くらい食ったかな.おなかいっぱい.
とつぜん食い物の話でごめんなさい(>テギョンのサイトから来たみなさん).明日からまた仕事に戻ります(笑)
後にも先にもこれがなくては始まらない.パスポート.ちなみに僕は日本のを使っています.
1996年以来,一貫して静かに僕を世界に証明し続けてきた四代目の彼は間もなく,この9月4日をもってお役御免となる.
今日新しいパスポートを申請してきた.受領までの1週間日本から出られないというのはかなりstressfulなものだ...
あらためて四代目君を見返してみると,凄まじいスタンプの数...どこの国に入るにも出るにも審査官はたっぷりと時間を掛けて端から端まで目を走らせ,不幸にも僕の次に並んでしまった人は己の不運を悔いたに違いない.ごめんなさい.
1996年当時僕は胸より下までのロングヘアだったから,麻薬やテロなど各種疑惑もかけられ,アメリカや香港では御丁寧に別室に通されてコーヒーまで御馳走になった.質問は決まって『なぜお前はそんなに旧共産圏のヴィザ,スタンプばかりあるんだ?』というような内容なのだが,いわゆる西側諸国に行くには日本人はヴィザなんて要らないし,スタンプすら押さない国もある.中国や旧東欧に行くには最近までヴィザが必須だったから,結果的にスタンプが旧共産圏ばかりになるのは仕方ないではないか!!
EUに入ったはずのポーランドでも,9.11の後だったからしょうがないか,チュニジアの入国スタンプ(アラビア文字)を咎められ,出国時に留め置かれた.偽造かどうかルーペで徹底的に調べていたようだ.その後無事出国し,ウィーンでパリ行きの便に乗り継ごうとした際,僕の搭乗券を機械に滑り込ませた瞬間,航空会社側のディスプレイに"Check this passenger's ID"という警告が出ていたから,疑いは完全に晴れていなかったんだね・・・.情報千里を走る.航空会社のネットワークというのはこういうとこ妙にしっかりしてるからなぁ...各便に秘密警察を乗せているOS(オーストリア航空)さすがです.
でもまぁ北朝鮮とロシアのヴィザは別冊だったので記録が残らなくよかったよかった(→行ったのかよ,って?)
真っさらのパスポートで今月からは快適な旅になることでしょうねぇ.髪も切ったし(笑)
酒を呑むのになにも高度40,000フィートの空の上まで行くこたぁないじゃないか.
ミックスするのになにも搭乗15分前の空港ロビーでやるこたぁないじゃないか.
そもそも
仕事するのにいちいち国外に出るこたぁないじゃないか.
慣れたが,よく考えてみると普通じゃない.
でも夕方の飛行機は好き.
ふわっと,一瞬地球から解放される.
昔,まだ飛行機に乗るのが単純に旅のためだった頃を思い出す.
昔は日本から韓国や中国に旅をすると,街並みや人々の服装,マナーなど『ああ,これは○○年前の日本だな〜』などと思ったものだった.
しかし今.東京は数年前のソウルに見え,1〜2年前の北京に見える.
東京が遅れているわけでは決してない.相手が速すぎるのかも知れないし.
いつも思うことだが,成田に着いた第1印象はとにかくタバコ臭い.どんなに公共の場所を禁煙にしても,背広の繊維や肺の細胞ひとつひとつに染み込んだニコチンはチェルノブイリの如く,簡単に放出を終えはしない.世界のどんな街でもこのような匂いを感じることはもはやありませんね.
そしてお金持ちがなんとなく頭悪そうに見えるのは,(いえ,誰のことを言ってるわけでもありませんよ,ニュース観てればなんとなく・・・)やはり努力が正当に報われない国をみごとに体現しているのでしょうね...
がんばりましょう...
(あ,政治的に右だ左だ愛国だ売国だという論議ではありません.念のため.生まれ育った国ですから・・・.)
だいぶ御無沙汰してしまった.書く暇がなかったと云うより,書こうとする内容を常に現実が覆いっかぶさってすーっと上書きしていってしまう,そんな日々なのだ.
フランス・カンヌでのMIDEMは例年どおり酒とトークとビジネスにまみれて瞬く間に過ぎ去った.このMIDEM,前述したように音楽業界の祭典なのであるが,僕が参加を初めてはや10回以上(以前は中国返還前の香港で“MIDEM Asia”なるものも開かれていた),最近大きなターニングポイントを迎えたような気がする.そこには二つの要因がある.
ひとつは勿論,ネットの進化だ.いまやMIDEM参加者は事前に全員のメアドが公開されるので,MIDEM開催数ヶ月前からメールを通してほとんどの商談が成立してしまい,カンヌに来てからは皆30分刻みで予約済みのブッキングをひたすら消化するのみだ.これでは偶然の出逢いの愉しみなど望むべくもない.特に予定調和を本能的に愛する日本人は,与えられたスケジュールをこなしたらあとは帰るだけ,といった雰囲気で,現地で出逢う人には警戒心剥き出しといった輩も多い.まぁ語学力の問題もあるのだろうが,(例外的にH社のS氏はとても国際的にオープンで,たいへんお世話になりましたが)
これでは,ただでさえ減少傾向にあったミュージシャンや作曲家本人の参加がどんどん少なくなり,ビジネスマンだけで作品が転がされている(失礼>業界の方々・・・僕は正直者です)印象がぬぐえなくなっているのは僕だけではないようだ.
さらに追い打ちをかけたのは9・11で,こうした大規模な国際的イベントでは当然のようにセキュリティチェックが神経症的に厳しくなった.それはそれで仕方ないことなのだが,問題は,500〜1,000ユーロもの高額な参加費を払えないミュージシャンが,会場周辺をうろついてデモテープを配りまくる,そんな熱心な姿が取締まりによって減りつつあることだ.以前はフランス的寛容さで彼らもこっそり会場に入れてもらえたりしたのだが,今では絶望的.今回も友人のミュージシャンが参加バッジ無しでパリからやって来たのだが,ある日本のレーベルの女の子曰く「正式参加してないミュージシャンの音源は受け取れません.こわいから」と突っぱねた.天にも届く恐ろしいマニュアリズムだ,何が怖いのだろう.CDに超薄型爆弾でも仕込んであると思ったのだろうか・・・.
でもまぁとにもかくにも,トリノオリンピックを上回る90以上の国からの人々が集まっているのである.人間を見ているだけで面白くないわけがない.特にオープニングのカクテルパーティは最高,叫ぶイタリア人,ぺこぺこ何回もお辞儀をしている日本人,その間を飲み物を運んで器用に動き回るドイツ人,チャイナ服に仏頂面だが酔うと気前の良い中国人など,まるで昭和初期の国際会議を描いた風刺画さながらの光景が展開する.よくよく考えれば,世界が,それも民間人がこんな風に集まれるようになったのは歴史上ここ数十年そこそこの話ではないか.
立ちっぱなしでのミーティングの連続に疲れ果てて会場内のカフェに座り,緊急食であるピザと赤ワインを頬ばっていると,向かいにえらく機嫌の悪そうなカナダ人がいた.つぶやいて曰く「ったくどいつもこいつも『最高だ.そして私はとても忙しい』と判で押したような答えばかりしやがる.おいOsamuとやら,こんだけ人が多いんだぜ,そんなに全員がうまく行ってるはずねぇじゃねーか.」
まったくその通りだ.少なくとも「おれは今回は最悪だ.すべてのミーティングが空回りだ」と正直に言う奴にはとんとお目に掛からない.彼は言った「最悪とまではいかないが今回はかなりまずい・・・」
その眠そうなカナダ人(同じ映画作曲家だった)と僕は,疲れにまかせてだらだらと,やがては作曲法の複雑かつパーソナルな話にまで踏み込んでいった.意外なものだ.ねもさと疲れが肩肘の力を取り去り,こんな創造的な話へと導いてくれたのだ.僕がMIDEMに対して求めていたものはこうしたいわば黄金の道草だ.ビジネスの出会いはその後数年続けば良いものがほとんど.しかしこうした作家同士の会話は,いつまでも心の中で反復されていく.ねもさと疲れに感謝.
スペインはバレンシアに来ています.そう,あのバレンシアオレンジのバレンシア.
とは言ってもマニアックな御仁にはオランダ人プログレロックアーティストの名前のほうが先に浮かぶかも知れませんが...
その名のとおり街の街路樹にはnaranja(ナランハ=オレンジのこと)がたわわに実っています.ただしそれは苦いからもぎ取って喰うな,とロンプラには書いてありました.こういう大事なこと,なぜ『地球の*き*』には書かんかなぁ.
まぁそんなこと関係なく新市街のブティック巡りをするような人が読むんでしょうなあ.
成田からパリ経由で21時半ごろ空港に着いたのだけど,街の食堂の夕食ピークはだいたい23時ごろ.いいですねー.なんかいい感じです.その代わり24時になるとパタンと店じまい.コンビニっぽい店でもアルコールは夜売りません.朝早いからねー.やはり一日2回寝る民族は違うって!
で,聞いてくださいよ.不眠症であるはずの僕が,日本からヨーロッパへたぶんもう30回以上飛行機で飛んで初めて今回,エコノミークラスwestbound3人席満杯で『眠る』ことができました! なんか嬉しくて嬉しくて.理解できない人には理解できないかもですが,僕はベッドでも列車でも運転席でもとにかく眠りというのは努力して努力して努力してやっとやっ手に入るものだと思っているので,この感動はひとしおです.未来への希望が開けました.
出発2日前は徹夜,前夜は3時間半睡眠という条件もよく作用したのでしょうね.幸せです.ほんとに幸せだ,
今週末は東京でも雪が降るらしい.ということは,勘のいい皆さんはもうお感づきだろう・・・そう,僕は東京を離れるのだ.
毎年1月の終わりにはフランス・カンヌで開かれるMIDEMという音楽祭に参加している.音楽祭と言ってもカンヌ映画祭などとは違って,世界中の音楽業界の人々が一同に会して一気に売り込み合戦を仕掛けるというなんとも男臭い祭典なのだが.
僕の場合,そのついでに時季はずれのヴァカンスを楽しんでくるのが通例になっている.航空券は夏休みの半額以下だしね...
でもって今年はスペインにでも行こうと思い,いつものLonely PlanetをAmazonで購入した.英語圏では定番となっているガイドブックだ.たしか何年か前にもろんぷらの『スペイン』持ってたような気もするが,部屋中探しても出てこないところを見ると多分旅行中に出会った旅人にあげてしまったのだろう(重いからいつもそうしている).
しかし驚いたのは最新版の表紙! これが天下無双のロンプラの表紙かよ(笑)
そりゃさあ,スペインと言えば牛だよ.間違っちゃいないよ.おちんちん付いてるから乳牛じゃなくて闘牛用の牛にちげえねえ.そして一面の麦畑だってあるよ.でもこの二つが組み合わさったヘモさはなんだ...おれは明日からこんな所へ行こうってのか(笑)
スペインの方々ごめんなさい.まさか国じゅうがこんな景色なわけないよね.そりゃ例えば英米圏のガイドに出てくる日本というと,背景に大きく富士山,新幹線が走り抜け,手前には舞妓さんのどアップ・・・と見事1枚の写真に収まってたりするから.これは一種のカテゴリーなんだねきっと.中国では万里の長城を背景にパンダが笹喰ってるのが定番(笑)
まもなく当機はアムステルダム・スキポール空港に到着いたします・・・と機内が準備に入ったら,高度を表示する客室モニターに目を凝らすと面白い.
60m,40m,30m・・・と数字が小刻みに減っていき,0m,まだ行く・・・!
結局マイナス4mでタッチダウン・・・滑走路は海面下かよここは! さすがオランダ.
指で堤防を守った少年の名を取ってアムステルダム・ハンス=ブリンカー空港と改名しても良ござんすかもですねぇ.
それを知ってからね,アムスの空港で食事するとき,ついついなるべく高いところにあるレストランを選んでしまうのよ.なんか怖くて.
だって哺乳類だもん.
逆に300mにも下ってないのにぐぐっと地面のほうがせり上がってきてあれよあれよという間にフィニッシュを迎えてしまう広島空港も捨てたもんじゃないですが(笑)
12/04 @Amsterdam, Holland
ずばり,どっちがうるさいか.
赤ちゃんが好きな人も嫌いな人も,携帯フェチも携帯嫌いも関係なく客観的に見れば,日本は赤ん坊がうるさく,ヨーロッパではケータイがやかましい.
日本の赤ん坊に堪え性がないのでもヨーロッパのケータイが洗練されてないのでもない.これは寛容さの敷居値の問題だと思う.ナチスの時代,屋根裏部屋に隠れた赤ん坊はうっかり泣くことさえ許されなかった.今は平和な時代だ.うるさい赤ん坊は平和の象徴だ.泣け泣け.しかし赤ん坊はそこまで思いどおりに泣いてはくれない.その結果想像よりも常に静かな赤ん坊ということになる.
携帯については日本は神経質過ぎた.普及の過程で持てる者に持たざる者がちょっとやきもちをやいたような気がする.そこで周囲に迷惑にならない着信音やマナーが研究され抜いた.周りの人が気になって仕方ない,美しい日本の文化である...
ヨーロッパには着メロなんて洒落たものはない.いまだにハダカの電子音がほとんどである.でも誰も迷惑がっている様子はない.他人が誰と話そうが自由にさせてあげようという不干渉も素地にある.最近はSkypeの普及と共に,ラップトップPCに向かってにやにや話し掛ける者も増えてきた.これを気持ち悪いと見るか斬新だと見るか.
そして話に夢中の彼女は,横で大泣きする赤ん坊を放っぽらかすのだった,
12/02 @Budapest, Hungary
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