僕は2枚のパスポートを持っている.
と言っても二重国籍を取得している訳ではない.一枚は,日本国が僕に与えた赤い小冊子,最近はICチップなんてものが入っていてほとんど精密電子機器を携帯しているような気分だが,ともあれ5年とか10年経ったら単なる赤い紙に戻り,使えなくなってしまう単なる公文書.
つい先頃更新した↓
もうひとつは,目に見えない,いわば心の中のパスポートだ.これを取得するのに僕はずいぶんと手間をかけたんじゃないかな.いろんな人に裏切られたり歯がゆい想いを押しつけられたりしながら,やっと多くの国で受け入れが認められるようになってきたと思う.これは赤や黒の旅券と異なり,5年や10年で失効したりはしない.しかし,これが失効する時,それは久保田修が音楽を捨てる時,久保田修であることをみずから放棄した時なんだろう,と今はかたく信じています.
心にパスポートのない人と,僕はいっしょに仕事はしたくないし,一緒に時間を過ごしたくもない.
最近,『僕は外国には行ったことないんですよー』と言い訳じみて自慢げに語る人に多く会う.それはべつに恥ずべきことじゃないじゃないか.しかし,最初に僕に会って言う言葉がそれだというのが哀しいよ.外国に行っていないからこの程度の音楽でも頑張ったと言って下さい,とか,外国に行ってないから修さんほどのチャンスが来ない,だから勘弁してください,とか,なんだかんだ云って日本で認められなきゃ何やったって駄目だ同類にするな,と言っているようにも聞こえる.
はっきり言って,実際に行ったかどうかなんて関係ない.ほんとは行ったことがなくても行ったフリを最後までできる人のほうが僕は面白いと思うぜ.
港(ポート)を通り過ぎる(パス)ことの意味を,ほんとうに理解している人だったら,たぶん,その人を,僕は尊敬できる...人には,その人の数だけ通り過ぎるべき港があると思うから.
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