観てきました.渋谷bunkamuraオーチャードホール.ウェスト・カザフスタン・フィルハーモニー・オーケストラの6/4/2/4/2という変則弦編成に3人の打楽器,サックス,フィンランド出身の9人の歌姫,笛の太田光子と尺八の藤原道三は日本人.
作曲者カール=ジェンキンスO.B.E.自ら指揮...こんな編成を好きなように操って,作曲家としてあれほどの快楽はないでしょう(笑)
日本ではアメリカの影響で「アディエマス」と発音・表記されることが多いですが,カール=ジェンキンスはちゃんと「アディエムス」と発音していました.僕もずっとそう呼んでいたし.
そもそもこのグループ,なぜか日本では「ヒーリングミュージック」なるものの代表選手とされ,CMやらNHKスペシャルのテーマ等に用いられてきたのだが,そのカテゴライズはなんか違うと思う.僕が最初に魅了されたのは,なんといっても快い“気味悪さ”と“毒気”だったのでした.
だって,一人の女性の声を何十回もダビングして,言葉もわけの分かんない造語だし.Soft Machine等バンド時代に隆盛を極めたカール=ジェンキンスもついに気が触れたのか,と思った.
今回の公演もその気味悪さは炸裂し,僕を至福の境地へといざなったのでした.9人のアジュンマ(=おばさん)はあらゆる音符,あらゆる子音と母音を正確に発音する音源マシーンそのものであり,彼女らの歌う日本の「さくらさくら」も「♪すぁー・くぅー・るぁー.すぁー・くぅー・るぁー.」と見事に音素分解されていましたさ.意味の分かりそうで分からない言いまつがいっぽい日本語で「∋∧§※▽†〜雪は〜昨日ぞ〜ゞ仝〆〜●∽!」と歌うバックで何人かが「べねでぃーくとぅーす〜」などとラテン語で唸り,これはもうシュールの極致ですなぁまったく.
「カヤマ・カヤマ・カヤマ・ディ・イェー!」という歌詞で友人の香山さん(自営業)を狂喜乱舞させたKayamaという曲に至っては,あふれる人間愛に僕もつい一緒に声をあげて歌ってしまった.
しかし不思議と周囲に合わせて歌う人いませんでしたね...日本人は意味が分からない言葉となると急に異化して「どっかの外国語か」と片付けてしまうから,そういうことには興味ないのかな.
同じphonetically invented languageで曲を作っている(Libra Negra,ファティマの掌,odysseyなど)僕としてはなんか残念.自分のライブでお客さんがだれも唱和してくれなかったら怒りますよきっと(笑)
しかしこのADIEMUS Singersのアジュンマ達,生半可の覚悟で日本に来たのではなさそうです.尺八などとのセッションもコンセプト的には大成功だったと思うし,なにより日本語に対する強烈な音韻学的興味を持って望んでいたようでした.
今頃は関西公演中ですね.間に合ったらぜひ足を運んでみてください.
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